”やがて人の世の終末に 巡り会う時がきたら
年を重ねた月日の果てに
死が静かに近寄って来る気配が、
それにおののいているとは 私らしくないはずだったのに。
最愛の君の足音の影に 悩みはまたしても夜半に訪れて
わが想いをあらたにす
君をこそ恋したいて「落涙の居城」の中に
籠っていた私は 今こそ人生の冥界への道標の
指示すところへ さまよい出てゆこうか
そして空が私を待ちかまえ たくさんの白い雲をたずさえている。
いつも私を元気づけていた 君のやさしさに打ちのめされて
心の底から私は「幸福への願望」を道ずれに
探し求めてきたのだった
それは「愛」という姿なのだ
あの空を飛び交う鳥たちに叫んでみよう、聞いてみよう
わたしのこの心をこそ 今こそ伝えたい
私の久しい年月を芸術を武器にして
踏みしだいてきたのだったが
その「失望」と「虚しさ」を そして「孤独」の数々を胸に秘めて
生きながらえてきた日々は
人の世の花火が 時として「華麗」に空に散りばめられていた
五色をもって夜空に舞っていく花火の粉末を全身に
散りばめている感動の瞬間を 私は忘れない
今こそ最愛の君に捧ぐ
人生の終末の美しさとは すべて幻覚の幻だったのか
あなたに聞きたい
心のすべてを捧げて 時を生き抜いてきた今
美しい終末の足跡を残したいと
祈っている今日の日々を
傷めないでそっと 生きていたい私が
受け取ったあなたへの愛のことづけ
『落涙の居城に住みて』草間彌生 (via caramelholic)